書店を運営されている方にとっては、近年の売上減少の原因に日々
頭を悩ませて、眠れない毎日が続くことかと思います。
書店は営利目的で運営されている以上、従業員は昨年より今年、今年
より来年と売上ならびに利益を上昇させなければなりません。
しかし、前回の記事を例に挙げるならば

お父さんの自由に使えるお金は毎月1950円
学生の全出費の書籍に占める割合は2.1% (2560円)
と数字だけの判断は短絡的ではありますが、たとえ百歩譲ったとしても、
頭の痛いお話です。

そこに新古本書店の勢い、図書館の注目度を合わせて考えると、
頭の痛さにめまい、吐き気、二日酔い、そんなあなたにバファリンを勧めても、
その場しのぎの非常薬。効き目がきれればそれこそ常備薬化。免疫ができりゃあ
そんな薬も効かなくなるよといった次第であり、
既存の書店にとりましてはにっちもさっちもいきません。

すると例えば現状に納得がいかない書店はついつい

「犯人は誰だ!!」

という消極論に陥りやすくなります。
流通の問題や価格設定が出版社側に決められていることへの不快感については
しばしば述べましたが、

ここではその犯人が図書館であるかどうかを考えます。

書店側としては、無料で本の借りれる施設があるということはやはり
目の上のたんこぶです。しかも、図書館は70~80年代にかけ、市民に

「借りて読む読書行動」を定着させました。

さらに、市民の要求に応えるべく、年々図書館は自治体の懐事情にも左右される
ものの、改築、新築、音楽CD、ビデオの貸し出し、検索機能、そして
最近では自動貸出機の登場と、目覚しい発展をしています。
2003年現在、いわゆる公共図書館の数は 2825館です。99年は2585館
でした。しかしながら、図書館の数においてはまだまだ発展途上の段階です。

主な諸外国の図書館の数と比較すると、
アメリカ 15346館 (93年)
イギリス  5185館 (93年)  です。
また、人口10万人あたりの館数はそれぞれ、
5.9館
8.9館、

一方の日本は1.7館です。また、フランスは4.7館、ドイツは17.2館。
国土面積や人口の違いを考慮しても、諸外国から学ぶことの多いわが国では
日本の図書館の数は増える余地を残します。

つまり、僕の今の考えでは、
「借りて読む読書行動」の定着以上に

「読書習慣」のさらなる定着

のために図書館の増加を望みます。書店には頭の痛い話と冒頭では述べましたが、
図書館と書店は役割こそ違うも、本来は同類であってもらいたい。
扱うジャンルは同じ書籍、
それを営利・非営利はあれ、買うか借りるかの違いです。

図書館で読書習慣を身に付ける人が増えれば、単純に言ってしまえば、
それだけ本を購入する予備軍が増えるわけです。
ただし、その購入組が新刊書店を選ぶか、それとも新古本書店を選ぶかは
読者、あるいは消費者には選ぶ権利があるわけで、
いくら僕がかつては書店側の人間であっても、それを押し付けることはできません。

よって、「図書館犯人説」お門違いもいいところで、
図書館と書店は相互に読者、読者予備軍を育てていかねばなりません。

しかし、個人的に図書館にも少々お願いしたき儀がございまして、
今日はその中でも、複本購入の件であります。
複本購入というのはつまりどういうことかと申しますと、

例えば、直木賞作品「対岸の彼女」の所蔵数が
○○○○○図書館  20冊
☆☆☆☆☆図書館  15冊
◇◇◇◇◇図書館  10冊

のように、同じ本を何冊も購入するような状況のことです。
市民の要望や図書館側の見込み、あるいは業者の強い勧めがあるのでしょうが、
こういった複本購入に不満を持っているのは、当然ながら
書店、出版社です。ただし、複本購入が本の売れない致命的な理由とは思えません。

市民の側に立つなら、ベストセラーが多くあるに越したことはないのですが、
残念ながら、大勢の味方には僕はなれません。
同じ本は1冊、多くても2、3冊にとどめて、余った分を別の種類の書籍に費やすなり、
とてもじゃないけど市民の買えない図鑑や専門書などにまわしてはもらえないだろうか
というのが僕のわがままなお願いです。
利用者増加や利用頻度、貸し出し点数、市民の要望に懸命に応えたい気持ちは
大変理解できます。そして、それが図書館の予算に影響を与えることもわかります。
しかし、ベストセラーやロングセラーの売れ筋などは出版社や書店が作り出したもの。
同じようにニーズに応じるのではなく、書店にはできない公共ならではの
「読書普及」を目指していただきたいと思います。

その中では、僕のこれまた大変なわがままななのですが、
究極の図書館サービスとして、
「図書館の24時間利用」をお願いしたい。
この24時間サービスは現状では無理難題でしょう。
各書籍にICタグを装着することによる貸し出し・返却の自動化、自動書庫資料の利用
のすべてを大学ならまだしも、子供からお年寄りまで利用する公共図書館に導入する
のは本当に困難なことです。(ただし導入している大学もあります)
実際、記事にして書いても無理を言うなよ管理人とひとりツッコミを入れている
のですが、その究極の理想と現実の「落としどころ」をしばらくは考えたいと思います。
「想定の範囲外」ではありますが。