今日は、突如、今年の読書お気に入りのトップランクに浮上した

宮部みゆき著 「ぼんくら」

の感想を発信しようと思ったのですが、少し気分を害することがあった
ため、急遽記事を変更することにしました。
手持ちの記事のネタは他にもいくつかあるのですが、
「ぼんくら」の感想記事に関連して、
本屋での合点のいかない陳列の話をしたくなりました。
それが気分を害することだったのですが、
感情論が先行すると、語気を荒げてしまうので、冷静に書きますれば、


「ぼんくら」の陳列場所がおかしい!!

という不満タラタラの今日の管理人であります。

何をそんなにキレちゃってるのと、読者様が疑問を投げかけるといけないので、
以下にタラタラと。


宮部みゆき著「ぼんくら」は文芸誌「小説現代」の4年間の連載ののちに
2000年に単行本として出版された、江戸時代の人情ミステリーです。
それが文庫化されたのは、2004年春のこと。

一方、2004年の年末に著者による最新刊「日暮らし」が発売されました。
こちらも同じく「小説現代」の連載を書籍化したもので、単行本です。
「ぼんくら」同様、こちらも江戸時代の人情ミステリーです。

つまり、「ぼんくら」「日暮らし」は線でつながった書なのです。
「ぼんくら」を読んでいれば、「日暮らし」をより楽しめるような作品です。
その最たる例は、両方の作品に同じ登場人物が出ていることです。
ということは、並列販売という選択が魅力的です。

ところが、いくつかの書店ではこの2冊がまったく独立した形で陳列されて
いるのです。2冊を並列販売することを本自体が望んでいるにもかかわらず、
それが離れた場所でそれぞれ売られているのです。

だいたい離れて販売する理由の答えはだいたいわかっているのですが、
あえて書店員に突撃インタビュー。

takam16
「これら2冊は一緒に並べないのですか?」

書店員
「だって文庫と単行本ですから。」

要するに、本の形態ごとに書籍というものは通常並んでおり、担当者もそれぞれ
文庫担当、書籍担当とそれぞれ存在するのであるから、
「両雄並び立たず」
という言い分であります。

同じ質問を3~4店舗で行ったのですが、皆回答は同じ。「サクラ」でもいるのか
と少々疑わしく感じたのですが、それも絵空事。


もしかしたら、担当者はこの2作品の関連性についてなにも知らなかったのかも
しれません。しかし、新聞・雑誌の書評ではさんざん同じような紹介がされて
いるはずで、書店員はそういう情報を把握していないのか、あるいは、情報を
伝えるべき問屋や出版社がその努力を怠っているのか、

もしや、タイトルの「ぼんくら」にあわせて、彼らもぼんくらになりすましている
のか? ならば恐れ入った、と手をあげるのですが、その根拠にも乏しい.....

となると、やはり各担当者の横のつながりの欠如が生んだ産物なのかという
結論を導きざるを得なくなります。
同時に、本を形を優先順位に陳列する旧来の固定観念に洗脳されているとも
考えられます。




読者の知識が書店員のそれに勝ることは多々あります。読者にはひいきの作家が
います。一方の書店員はあらゆるジャンルの作品に精通していることが望ましく、
「広く浅い知識」
が画一化した知識よりも運営上・接客上はベターなのかもしれません。

しかしながら、読書というものの可能性や普及を前提に商売をしているのであれば、
宮部みゆきの単行本「日暮らし」が文庫本「ぼんくら」を読むことで、さらに
深い楽しみが味わえるということを、棚作りをもって提供すべきであり、
本の形にこだわるのはあまりにも石頭と言わざるを得ません。

さらに、この2作品が
半村良著 「どぶどろ」の構成を参考にしているという情報を持っていたのであれば、
ぜひとも半村氏の作品もからめていただきたいし、
宮部さんが松本清張を尊敬しているという情報を書店員が持っているのであれば、
そういうフェアをどんどん組んでもらいたいのですが、
なかなかそういった含みのあるフェアにお目にかかれないのはとても残念であります。

最低でも、店舗に多くの雑誌が入荷するのであるなら、そういう記事や書評を
存分に利用することで棚作りに生かすのであれば購入者にはいささかの反対もありません。

「読者がいつまでも読者でいるための棚作り」

を書店員が放棄するのはあまりにも残酷であります。
どんな週刊誌・月刊誌の記事、書評が読み手の支持を得ているのか、また、
そういう情報収集能力をどれだけ磨いているのか、
特に新刊入荷において劣勢の中小書店は、
「人材」
で勝負する気概を持たないと将来の崩壊は約束されてしまいます。

大きな書店は苦労することなく、欲しい本が手に入ります。
そういった環境に限って、本の詳細やつながりの知識は磨かれません。

中小の書店ほど、仕入れの苦労の反面、厳しい環境が知識や教養を深めます。

現状では、この2者を埋める方法はそういったアナログな部分です。
そういった「マニア」っぽい店員にもたまには会ってみたい管理人でありました。


「ぼんくら」の感想はいつ発信することやら.....
タラタラ。  


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第12回松本清張賞城野隆さんの  「一枚摺屋(いちまいずりや)」
に決定しました。おめでとうございます。