(管理人takam16のバーチャルなお部屋 です。)
 

 本屋とお客というものは、他業種に漏れずトラブルの多いもの。
最近、とある小さな書店ではカメラ付携帯に

「ダメですぅ!!」

と怒る書店員の姿を拝見。
この悶着の結末をしかと目に焼きつけようと、バトルを期待して
いたのですが、意外とお客はあっさり引き下がってしまった....

「チェッ。」 

と自然に舌打ちをしたtakam16。性格は案外悪い。
お客にはもっと食いついてほしかったなぁ、と解釈を入れていたところ、
新たな火種を発見。 姉さん、事件です!!

「頼むわ、ホンマ頼むわ。」

何を頼んでいるのかをもうちょっと近づいて聞き耳を立てるtakam16。

「これ家帰ったら同じのがあってん。な、ええやろ。」

関西名物、泣きの一言である。どうやら買った本と同じ本が家にあった
らしく、返品交渉の真っ最中である。ちなみに、返品をお願いしているのは
オバチャンである。おあつらえむきの光景だ。書店時代を思い出した。

さあ、書店員、どうでるか!こちらもオバチャンである。
お客側のオバチャンの方が背は低いが、小々体が重いようだ。
しかしながら、体の重さと口数の多さは比例しない。

「いつもここで買ってるねん。店長に聞いてくれたらわかるわ。」

すでに財布を手に持っている。お客は万全の準備である。

腕を組みながらじっと考える書店員。「ざますメガネ」がキラリと光る。
どうやら店長は留守のようだ。自ら判断を下さねばならないらしい。
しばらく考え込んだ後、
「申し訳ありませんが、返品はお断りしているんですよ。」

強く出てきたよ、おい。

「ちょっとアンタ、他の店は返品してくれるねんで。なんでここアカンの?」

おっと、オバチャン、勇み足だよ。書店員の次の言葉が容易に想像できる。

「ほー、お客様は以前にもこのような間違いがあったのですか?」


ね、姉さん、大事件です!!これから戦いが始まりそうです。

書店員の「ざますメガネ」がさらにキラリと光る。
他店で返品経験があるという事実を述べることでオバチャンは
他店との対応の違いを持ち出し、返品、そして返金を求める。
一方の書店員は他店のネタを出したところで、返品の常連であることを
認知する。女の戦いはこういう場面でも繰り広げられる。
少しおしっこがちびりそうになったtakam16。しかし
我慢してもう少し成り行きを見守ろう。

「そうや、アンタの店それやからハヤらへんねん。他の店はちゃんと
  対応してくれる。ここは対応してくれへん。この差は大きいで。」

オバチャンはこういうレクチャーが大好きだ。説得は精神論に終始して
いるが、どこか関西らしさが出ている。

「誤認したお客様が悪いのです。」

なかなか的を得た回答だ。お客が自分で勝手に間違えて、勝手にわぁわぁ
やっている。法的にはこの返品を店側は拒否できる。
ここで考えられる個人と事業者の法律は、
民法、消費者契約法、特定商取引法だが、どれも難しい。
店員が勧誘してモノを売ったわけではない。
お客としては、商品に欠陥やキズでもあれば主張は可能だが、
あまりにも苦しいいい訳である。
店側に一本!!と思うや否や、オバチャンに強力な助っ人が控えていた。
オバチャンの友人である。その友人はまたまたオバチャンの類であり、
さらにひとまわり大きい。

「定期購読の雑誌を取りに来てんけど。」

コテコテの常連である。書店員はこの手の常連には案外弱い。

「いつもお世話になっています。」

「ざますメガネ」の店員はこちらの予想通り、表情が一瞬ゆるむ。
よくある光景である。
すかさず次の一言を発する。

「友達がこうしてお願いしてることにウチも見過ごすわけにはいかん
 からな。この顔に免じて返品許してもらえんやろか。」

まさに逆転の1本である。あっさり決着だ。
オバチャンvsオバチャンの戦いは思わぬ助っ人の来店により
数で勝ったお客側のオバチャンの書店に対する影響力が
利いた戦いだった。

返品・返金騒ぎは書店によってまちまちだが、この書店では誤認返品
は受け付けていないようだ。
よって店員の裁量に左右されるのだが、こういう揉め事は、数が
ルールを制する場面がよくある。ましてや予想だにしない常連の
登場は書店員に迷いを生じさせた。
奥にコミック担当らしき若い女性店員もいたのだが、彼女を呼ぶべき
だった。なにせ、返品の対象はコミック文庫だったからだ。
仲でもよろしくなかったのか、疑問である。
たった1冊のコミック文庫へのこだわり。
食べ物の恨みは怖いというが、

読み物の恨みも怖いのだ。

当事者のオバチャンは無事返品に成功。友人のオバチャンも、取り置き
の雑誌「家庭画報」を入手。この雑誌、重いことで有名だが、
オバチャンの体重がその重さをかき消してしまう。
笑いながら店を去った2人。そして1人取り残された「ざますメガネ」に
既に光は失われていた。


takam16も、いいかげんこの店を去った方が良さそうだ。
立ち読み野郎と化して約1時間。
狭い店内ではこういう輩が一番目立つ。
しかも、おしっこが漏れそうとなるとなおさら周りから見た自分の
行動が滑稽に見えるだろう。

おしっこへの恨みも怖いtakam16でした。


コミックセット2