takam16の本の棚
です。バーチャルですが......


 
 本屋の大小を問わず、お客との間でさまざまなやりとりが行われ、
それが相手に幸せを与える結果になったり、時には相手のものすごい
剣幕に怖気づくこともあり、いくつになってもいい社会勉強をさせて
いただくのであるが、場数を踏んでいくうちに質問への応対も
成長していくものである。
初期の段階でやっかいなことは、雑誌の発売日や書籍の場所の質問。
お客にとってはとんとんと答えが返ってくるのが普通だと思うのだが、
店員はこの質問をさらりとかわすには最低3ヶ月は必要だろう。
そして、ある一定期間が過ぎれば、毎日シフトに入っているなら中小書店
なら店舗面積が小さいため、即答が可能である。商品在庫のあるなしに
かかわらず、お客は必要のないストレスを溜めることはまあない。


入社して数ヶ月経ち、仕事に慣れると人間関係も慣れ始める。精神にゆとり
が出ると、アルバイトとの会話にも勢いが出る。

さて、いくらなんでもあの本については質問されないよなというような会話
のやりとりが過去にtakam16とアルバイトとの間で交わされたことがある。

当時は(今もそうかもしれないが)、集英社の週刊ジャンプ系コミックのパワー
が凄かった。
ワンピースにヒカルの碁、 NARUTOは発売日には何百冊と入荷した。

「ワンピース○巻ありますか、とかヒカルの碁○巻ありますかとかの質問は
 よくあるよなぁ。」

とアルバイトが言う。ちなみにtakam16は別に「ため」でしゃべられることを不快に
思わないし、別にそのようなことは気にしない。それはすべてにおいてである。
例えばブログで誰がトシだろうが興味はない。なんでもごじゃれだ。

ところが、二人の会話でこれはないだろうという話になった。

「ボボボーボ・ボーボボありますか? とは言わへんよなぁ。」
「さすがにそれはないやろ。」

 ボボボーボ・ボーボボ。ジャンプ系の集英社コミックのひとつだ。
言いにくいやら、どこで傍線を使っていいのやらで非常に迷うのだ。
takam16だって、最初はボーボボボボ・ボーボとかボボボボ・ボーボとか
言っていたものだ。
お客としても、言うにはなんだか恥ずかしいタイトルだ。
両者とも慣れればたいしたことはないのだが、この本だけは質問されず
今までにいた。

ところがである。

いかにも、俺はマンガ喫茶で1日中過ごすのが趣味なんだといわんばかりの風貌
をした男が、禁断の質問についに足を踏み入れたのだ。


「ボボボーボ・ボーボボの6巻はありますか。」


           客
   ____________________________
 (カウンター)            
             店長  バイト

          takam16  


コミックというものはわからないものはさっぱりわからないもので、
あろうことか店長にその知識が不足していた。takam16がパッチワーク
関連の書籍に「?」となるのと同じ感覚なのだろう。
さらに、店長は店外の業務が中心だったので商品知識はほぼ我々に任せきり
だ。

「ボボボーボ・ボーボボはありますか。」

の質問に店長は
「ボ、ボボボボ?」

「はい。ボボボーボ・ボーボボです。」
お客の発音は正確だ。takam16とアルバイトは口をあんぐりとしながらも
状況を見守る。助け舟を出さないところが意地の悪いところだ。この辺りは
ちゃんと示しあわせているのだ。質問はないだろうと予想しておきながら、
もしもその質問が店長に及んだ時はだんまりを決め込む算段なのだ。
親指を立てて合図を送る。アルバイトもそれに応える。


さて、お客はといえばますますしつこくなっていく。

「この前はボボボーボ・ボーボボあったのになんで今日は
 ボボボーボ・ボーボボがないんですか? ボボボーボ・ボーボボ楽しみ
 に買いに来たのに。」

おい!ボボボーボ・ボーボボの使いすぎやろ。こそあど言葉を使え!

と心でつっこみを入れながら店長の横でその状況を見守るアルバイトを見ると、
なんだか笑っている。どうやらツボに入ったようだ。

「ボーボって言われてもねぇ。」 

店長はとんちんかんな顔をしている。

「いや、ボボボーボ・ボーボボです。」

客は意地になっている。まず自分の言っていることを理解してもらえない
いらだち。さらにはタイトルをはっきり言えない店長に対する憤り。

ここでもtakam16とアルバイトはフォローをしない。
がちんこ勝負に我々の入り込む余地はない。

「そ、それはいったいなんですか?」

さすがの店長もここはプライドをかなぐり捨ててお客に質問するしかない。

こいつはひと悶着ありそうだ。イライラを隠し切れないお客の次の反応が
気になる、とお客の目を見ると、視線があさっての方向をむいている。
だが、あさってと言ってもお客の視線はやや店長の首より下の方向だ。

ニヤリ。予定通りだ。

実はお客はボボボーボ・ボーボボを望んでいる一方で、
その店長がボボボーボ・ボーボボなのである。

お客はそのボボボーボ・ボーボボを見つめている。
そして、イライラが募るお客がそのボボボーボ・ボーボボを見て

「ぷぅ~っ。」

と吹き出したのだ。さすがに我々も「ぷぅ~っ。」と店長の前で
するわけにもいかないので

「在庫チェックいってきま~す。」

と、方便してカウンターを離れると、死角になる場所で

「ぷぅ~っ。」と吹き出した。我慢できなかったのである。


お客はどうしてもボボボーボ・ボーボボが欲しい。
でも店長はそれを理解しないどころか、自分自身がボボボーボ・ボーボボ
を持っているのだ。
それを知ったお客は今、ツボにはまっている。
そして我々がその光景を前にツボにはまっている。
店長はというとお客のとんちんかんな質問にどツボにはまっている。



ボボボーボ・ボーボボ。

これは店長の肘より下の腕に生い茂ったたくましい
「毛」なのであった。






あれから36ヶ月。
ボボボーボ・ボーボボは18巻まで発売している。
一方、あの店長のボボボーボ・ボーボボはどこまで生い茂っているのだろう。
ちゃんと水分を、そして栄養分を与えているのか。
今一番の懸念材料である。

ボボボーボ・ボーボボ。


蝉の鳴き声の勢力が変わり始めた。
そろそろつくつくぼうしのお出ましである。
ちょっぴり寂しくなった8月21日。
皆様、いかがお過ごしでしょう。


 
澤井 啓夫
ボボボーボ・ボーボボ 18 (18)
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