takam16の本の棚
です。バーチャルですが......

 先日、「趣味は読書。」という本を記事
にした。「字」に衣を着せぬ表現
で、人気のある斉藤美奈子氏の著書の中の1冊である。

しばしば履歴書欄には趣味・特技などという項目があるのだが、 そこに書かれていることというと、 音楽鑑賞 映画鑑賞 スポーツ観戦 ショッピング 旅行 と、まあ当たり障りのない深みの欠けたものばかりだ。 その中でも、「読書」という言葉はその最右翼に挙げられるであろう。 以前はバイト面接などもした経験があるのだが、 「読書」を含め、以上のような表現を見かけると、履歴書というものに 空欄は不謹慎だといわんばかりで、 テストで何も書かずに答案用紙を提出するよりも、当てずっぽうでも何か 書いた方が得点の可能性があるのではという学生時代の先生達の教えを 受け継いだものと同類なのかと思ってしまう。 だから、趣味や特技の欄には冗談でも面接官を笑わせるものを書けよと 心で叫んだり、あるいは白紙も謎があっていいじゃないのと考えたりするので あるが、そんな自分も趣味や特技はなんだと尋ねられれば、 読書 旅行 音楽鑑賞 と書いていた。学生時代からこの3点セットだ。さぞかし面接官をつまらなく させただろうと今更ながら回顧し、しおしおとしてしまったのだが、 先日、友人が彼の勤める会社でアルバイトを募集し、その面接を担当したそうだ。 というより以前よりそういう業務もしていたという。 そこで、 「こいつはたまげたぜぃ。」 と目を西川きよしのようににして話してくれたことがあった。それが 「趣味は、ブログである。」 というので、話を聞いた自分も一緒に目を西川きよしのようにした。 アルバイトの面接にやって来たのは大学生活をエンジョイしていることが 見るからにわかる小麦色に日焼けし、茶髪ぎみの男性だったらしい。 その男、履歴書の他の箇所は何の見栄えもしない杓子定規な内容だったの だが、 「趣味はブログ」 という書き込みには友人も さすがに驚いたようだ。おまけにご丁寧にもブログのタイトルとアドレス までちゃっかり記入する有り様だ。 友人は、面接で相手の当然ながら緊張した素振りをもてあそぶのが非常に 大好きだ。フェチとかいうやつだ。緊張フェチとでも言おう。 あるアルバイト希望者が、履歴書欄の趣味に 「野球」 と記載してあれば、友人は 「例えば?」 と尋ねる。緊張で物の言えない相手に会話の応用力を問う厳しい質問だ。 明石家さんまが若手芸人の困惑を誘う、人気番組「踊る!さんま御殿」 でのあの手口だ。 実際、友人はそれをパクったと語っていた。 どんなことでも 「例えば?」 と友人は尋ね、相手をヘロヘロにさせるのを楽しむのだ。 奇麗事をいうなら会話力を試したのかもしれないが、下手をすれば、 愉快犯だ。 ところが その友人が「例えば?」と尋ねる前に「趣味はブログ」の大学生が 例えば...と話し出したのだ。先手をとられたと思ったかどうかは定か ではないが、愉快犯としては失格だ。 面接といっても仕切られた場所での密室空間ではなく、デスクにPCが 載せられた自分のポジションの横に椅子を置き、そこに面接者を座らせる 形式だから緊張は密室ほどではないにしろ、周囲の職場風景に面接者が 圧倒されるらしい。そんな場所で 「ちょっとアクセスしていただけませんか。」 と予想外の会話の展開になすがままに友人はインターネットで当該ブログ にアクセス。そして 「例えばですねぇ.....。」 と画面を指しながら大いに雄弁をふるいだしたのだからたまらない。 適当に相槌して早々と帰宅させたらしいのだが、いろいろと興味深いことがあった。 まずはブログタイトル。なんと実名で、 「田中亮太と申します」(←名前はここでは仮名です) だ。おまけに画像写真まで鮮明にUPされている。 その中で日常の出来事、特に女ネタやコンパネタ、趣味ネタに加え、 友人から聞いたアルバイト面接の前後の話もしっかり書かれている。 その面接前日の気持ちとやらを綴った記事を面接官である友人に見せたらしい。 早めにお引取り願った気持ちもわかる気がする。 これらの一連の出来事を聞かされて面白いなと思ったのは、 ブログを現実の世界に導入したことだ。 しかも面接だ。その男にぜひ会ってみたい。 企業の社長や著名人などの赤裸々日記というものはいくらでも拝見する。 私的な先生や弁護士、講師の肩書きを持つ者が実名でブログに綴るのも 結局は同じようなことで、画像写真もよく目立つ。 しかしながら、すでに400万を超えるといわれるブログ。その管理者のほとんど はブログが生活の主役ではなく、目的はいろいろあろうがあくまでも個人の 内面を包み隠さず日記調にするパターンだ。 よって、しばしば口には出せないこともいっぱい書いている。 だから、ブログを持っているということを知り合いに容易く知らせるわけ にはいかないのだ。 日記や雑記というものは、自身の周りで起きる出来事をテーマにすること が第一だ。そこに口には出せないことを書くのだから、どうしてもカミングアウト ができないのだ。 また、趣味を語るジャンルや特定のジャンルというものは実を言うと知り合い に読まれることが日記以上に恥ずかしいことが多々ある。 本の書評や感想は読めば読むほどメルヘンな言葉のオンパレードになりがちだ。 いろんなところがくすぐったくなってくる。自分で自分の記事を読んでいて 正直キモい。 小説や詩も、それが商業出版を目指すならともかく、目的が別にあるなら 知り合いにはちょいとばかり恥ずかしい。 日常の色恋物語を綴るのは最も知り合いに伝えづらいことだ。 彼氏あるいは彼女へブログの存在を明らかにせねばならない場合、その タイミングは整形やカツラに近いほど困難をきたすだろう。 ニュースや新聞記事の批判はどうだ。 名前を出せないから批判できる。名前を出したら責任と災いが及ぶ。 ただしこちらの場合は家族や友人に知られてもさほど影響はなさそうだ。 仕事にまつわるブログはどうだ。雇われている者がそれを書くことが 知れたら、職場の情報を漏らしたということでお咎めはハンパではないだろう。 仮に仕事場でブログ記事でも作成しようものなら、いかにバレずにやるかに ばかり気をつかう。こちらはアダルトサイトを職場で閲覧するぐらいスリルの ある行為だ。 ブログというものをどう位置づけるかと考えた。 それはおそらく 「秘め事」あるいは「隠し事」であろう。 しかも、その「秘め事」「隠し事」は現実の「秘め事」「隠し事」に匹敵する。 いや、現実のそれらをブログに書くのだ。イコールの関係だといえる。 だからこそ、先述の 「田中亮太と申します」(←名前はここでは仮名です) というシロウトの実名による赤裸々ブログは気に入った。 実のところ、当ブログ「本と本屋と図書館に魅せられて」は 約3名の友人・知人が知っている。 そしてその3名ともに個人のブログを持っている。 お互いは取引きをしている。 もしもブログで実名を公開したら、こっちも公開するよといった感じだ。 「本と本屋と図書館に魅せられて」において、管理者takam16が 色恋ネタや仕事に直結するネタに触れにくいのには理由がある。 それは当然ながら自分を知る人間がこのブログの存在を認識しているからだ。 ちなみに本日登場の面接官の友人はこのブログのことは知らない。 多くの方ははブログの存在を隠しながら生活をしているようだ。 友人同士で楽しんでいるブログも見られるが、はじめからブログをすること を知らせた方が途中から知らせるよりは楽である。 個人的に記事の中で最近お気に入りのジャンルは、 ブログが他人にバレたかどうかの切羽詰った記事である。 修羅場の告白。そのアタフタする様が言葉は悪いが痛快だ。 バレたことがきっかけでブログをやめるとは言わないでほしい。 さて私事なのだが、 1週間ほど前、学生時代以来の友人が、 「takam16、なかなか魅せられてるねぇ。」 などと言ってきた。なんだか嫌な予感がする。 しばらくアタフタするかもしれない。