takam16の本の棚
です。バーチャルですが......


前編では読書世論調査に対する否定的な考え、そして文化定着の
ための読書のあり方についてちょろっとお話した。
まあ、暗い話である。もっと秋らしい、短いながらも
最も花鳥風月を堪能できるこの季節にあわせるような楽観的な
語りをしたかった。


しかしぐだぐだ言ってもしょうがない。
この読書世論調査にはなんだか肌が合うのだ。
特集記事と図書館ネタで後編を語る。

さて、当調査における特集記事は旬なネタで勝負してくるのが常だ。
昨年の特集は、綿矢りさ、金原ひとみによる若手芥川賞受賞シーンの
写真がババンと出ていた。
特に綿矢りさにまつわる報道が記憶に新しい。

「綿矢カレー」などというメニューも登場したらしいが、50年ほど
経って、「平成史」なるものが活字か電子かはわからぬが出たとした時に

綿矢カレー、本人抗議で即中止。

と年表にでも記載されるのだろうか....


また、好きな芥川賞作家、直木賞作家のアンケートによる
ランキング発表があった。

好きな芥川賞作家
1位 松本清張
2位 遠藤周作
3位 井上靖
4位 石原慎太郎
5位 田辺聖子

好きな直木賞作家
1位 司馬遼太郎
2位 五木寛之
3位 向田邦子
4位 井上ひさし
5位 平岩弓枝


多士済々の顔ぶれだ。泣く子も速やかに黙ってくれそうな名前だ。
いや違う。読書趣味を持たなければ、作家の名前などシロウト同然の
扱いであろう。野球を知らない者が野球選手名にとんちんかんなのと
変わらない。
ブログ読者様は比較的年齢層が若いと思われるので、知った名前とランク
も少し列挙する。

村上龍 (芥川賞8位)
辻仁成 (芥川賞10位)
宮部みゆき (直木賞7位)
林真理子 (直木賞8位)

ちなみに、出せば宣伝せずとも書店で売れる作品を出す村上春樹氏は
これらの賞は獲得していない。

ここでのランキングはアメブロのランキングのごとくあてにはならないが、
1位の両者については納得がいく。本屋の文庫担当者は彼らの作品に常に
気を配っておかなければ、物言うリピーター達を怒らせる。
宮部みゆき作品、池波正太郎作品も含め、棚がスカスカしないように注意する
必要がある。まとめて買われるのがこれらの作家本の特徴だ。
西村京太郎作品もまたしかり。初めて文庫担当者の仕事に就いた時に
その売れ方に驚く作家の一人である。彼も2つの賞には関係ない。

さて、今年の特集はフリーペーパーとブログネタできた。
特に後者はブログということで自分達のことを述べているので興味を持った。

「ネット上に書き込まれた小説、エッセー、日記、詩などを読んだことがある人」

よく読む 3%
時々読む 16%
全く読まない 79%


「自らネット上で自作の小説、エッセー、日記、詩などを」

掲載したことがある  3%
今後掲載したい    6%

「ネット上の出版物」

読んだことがある 7%  例) 「電車男」「DEEP LOVE」

ほほほほ。takam16はどうやら
「よく読み、掲載したことがある」者のようだ。
というか、この記事を読んだ時点で皆が同じ者のようだ。
ただし、自身ネット上の商業出版物読書経験はまだない。  


ブログなどは、総数が400万を超えていると言われているが、
中には1人で2~3個運営しているという話もよく聞く。
また、放置プレイのブログも多く、中には退会ができないブログもあると
聞く。
まったく、小さなコミュニティでキーボードを打ち続けているのかぁ
と改めて気持ちまでが縮こまってしまった。

ブログはダメ会社と同じで出入りが非常に激しい。つまりやる者の数と同じく
やめる数もあり、おまけに無期限休職中な者も多い。



目が離せないのはやはり図書館ネタだ。
過去1年間に図書館を利用したことがあるかとの問いは

ある 29%
ない 69%

と出た。自分は本もよく借り、調べモノも多くするので
「ある」の仲間なのだが、よくよく考えてみると、図書館に訪れる度に

「あ、この前見た人。」

という場面に頻繁に遭遇する。つまりリピーターの存在だ。
リピーターはマンガ喫茶のごとく非常に多いと感じさせられる。
下手をすれば、座席が以前も隣同士だったなぁという
ことも時々ある。おのおの「指定席」があるようで、自分もそのひとりだ。
座りたい座席を他人に占拠されると虫の居所が悪くなる。

図書館勤めの方には楽観的な数字ではないが、69%が利用していないと
いうのは実は驚いた。1ヶ月ならともかく1年だ。
その理由をアンケートでは聞いている。やけに準備がいいじゃないか。

①忙しくて時間がない   52%
②近くに図書館がない   32%
③貸し出しの手間が面倒  18%
④読みたい本・雑誌がない 18%
⑤開館時間が合わない   14%   (複数回答可)


近くに図書館がないというのは、近くに図書館がある自分がいかに恵まれた
環境にあるかを感じさせるものであるが、数字の低い分野により興味がわいた。

「貸し出しの手間が面倒」ということについては、図書カード作成段階のことを
いうのか? ただ単に面倒ということなのかはわからないが、少し話がそれるかも
しれないが言うと、各地域で時々見られるのが、
返却ポストを図書館以外の例えば駅前など人通りの多いところに
用意する試みがあることを思い出した。
また、コンビニでの受け取りが可能なサービスもあるという。こちらは有料
らしい。
自分の街にはこういったソフト面、特に館外でのサービスに誇れるものがない
ので感心している。


また、「開館時間が合わない」というのは、確かに働く者にとって、
図書館の開館時間は都合が悪い。自分の街では夜8時まで開館しているが、
これは比較するとかなり遅くまで開いているようだ。
5時~7時頃に閉館するところが大半で、働く者が図書館を快適に利用する
最善の方法は、外回りのフリをして図書館でゴロゴロ過ごすに限る。


自分の図書館の開館時間に対する考えは、24時間だ。
コンビニが現代にウケがいい理由の一つは「時間」に束縛されないことである。
時間を定められると利用する側は気持ちが落ち着かず、自由を奪われる。
また、足を運ぶのもためらわれる。

しかし、だからといって図書館員に24時間、朝昼晩働けとは深くは思わない。
それは、さきほど持ち上げたコンビニを否定することになるのかもしれない
のだが、
競争の社会において、例えばある店舗Aが8時まで開いていたとすれば、
店舗Aに負けたくない店舗Bは9時まで開けようということになる。
ならAは10時、Bは11時というのが昨今の流れである。

ただでさえ日本人は働きすぎだと思っているのにこれではますます労働時間が
長くなるばかりだ。長時間開いていて、しかも年中無休の店舗の店主の顔色
が紫色になっている光景にしばしば出くわすと、仕事から逃れたい心情が
伺える。プログラマーなども徹夜は当たり前と聞く。
自分も夜中に働くことは朝昼働くより嫌だ。ちゃんと寝たい。


だから、図書館員に無理強いさせずに利用者を束縛させずに快適に使って
もらえる方法というものはないのかといろいろ思案するのだ。

最近図書館司書の非常勤が大変多いとのコメントをいただいた。
そして彼らの環境は劣悪らしい。それでは食ってはいけないようだ。
近年の図書館費節減が生み出した1つの形だ。

しかし24時間開館したとして、そこに非常勤司書をわりあてるという
以前に、深夜は人件費がよりかかり、また女性の多く働く職場に深夜
の自由な出入りが可能な図書館は危険度Aだ。

ならば警備員だ。
接客サービス満点の警備員。しかも司書免許を持っている警備員。
そんなお方、いませんか?

24時間利用できるためのハード面にも気を配るべきか。
返却・貸出すべて自動、書庫資料はスタート時は夜間は使用不可能といった
感じか。

図書館の運営を民間に任せるという手段もあるにはあるが、浸透はあまり
見られない。確かに知的で融通の利いたサービスが期待されるが、
採算にあわないことはやらない姿勢も生まれやすくなる。
アメリカはニューヨークの図書館は社会功労者の寄付により成り立つ
図書館だ。しかし、景気に左右される面もあり、寄付が集まらねば運営の選択肢
は限られる。財政の事情で休館にすることもあったと聞く。




今年の「読書世論調査」は、1ヶ月に読む冊数の平均という数字に疑問を
感じつつも、ブログ、そして図書館についていろいろと考えさせられることの
多い、そんな記事でありました。
特に紙面に多くを割いてはいないながらも図書館におけるアンケート結果は
これからの図書館の位置づけを考える上で、自分の知的研究材料の起点になった
印象でした。

たかが「読書世論調査」、されど「読書世論調査」!!


以上、毎日新聞10月26日朝刊より。ちなみに10月27日は同新聞より
「学校読書調査」もあります。子供のおられる方、子供の意見に興味の
ある方はそちらの新聞ももご覧下さい。