takam16の本の棚
です。バーチャルですが......
「こんな朝早く待ち合わせてどないするねん!!」
これがtakam16の第一声であった。
天気が良ければ早朝は確かに気持ちがいい。
なんといっても静けさだ。普段は人込みを掻き分けながら、時には肩同士
がぶつかりあいながらでなければ通ることのできない雑踏とした街が
早朝だけはまるで別の世界にやって来た気分にさせるとはなんとすばらしい
ことだろう。
「明」から「暗」に変わりゆく夕焼け以上に
「暗」から「明」に変わりゆく朝焼けに新鮮味を覚えるのは、生まれてこのかた
その空間に自分が身を置いている回数の違いによるもの以上に、後者には
静けさという前者には持ち得ぬ妙技を備えているからだ。
だからこそ、朝は非常に好いているのだ。
しかしである。
JR京都駅八条口(南側)に朝6時に待ち合わせてどうなるというのが
こちらの言い分だ。
その場へ着くためには朝4時前に起きねばならない。しかしこれはまだよい。
早起きは三文の徳という諺に従順なtakam16にとって、
その行為は朝飯前である。
この日(10月31日)は、月末の多忙であるにもかかわらず、仕事が休み
ということで、せっかくのお休みを家でしおしおしていても仕方がない
ということで、京都市内を縦横無尽に練り歩こうというのがこの旅の狙いだ。
そして具体的な目的は次の3点である。
① 京都歴史散策
② 京都の書店・図書館・美術館巡り
③ 京都癒し旅
しかし問題は、朝6時に京都観光をスタートさせるにも、どこもかしこも
門を閉ざしているではないかということを言いたいのだ。
神社・仏閣の多くが早くても朝8時にならねばその歴史を一般人に披露しない
のに、6時に待ち合わせても8時までの2時間の過ごし方をどうするねん!
ということである。
そのくせに、連れのNは6時になってもいっこうに姿を現さない。
さっそく機嫌を損ねるtakam16。
とりあえずは気晴らしに荷物のチェックだ。
まずは本のサイズにいつも難癖をつけながらも、もはや京都観光の必需品
となりつつある、「るるぶ京都を歩こう」。
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1日をたっぷり満喫するにはぜひ用意したい「京都観光一日乗車券」。
さらには旅にはモレなく付いてくる「デジカメ」。電池の予備も万全だ。
そして読書本の準備もちゃんとできている。
「信長の棺」。読中の段階だが読み手の心をもぎ取った新人作家による
歴史ミステリーだ。また、本書には昔の京にまつわるお話もちらほら出てくる。
ガイド本で巡る京の旅もよいが、小説の名所を訪ね歩く京の旅もこの上なくよい。
本書は決して京都が舞台の中心の物語ではない。しかし、ささやかながらも
本書に登場する当時の京都の建造物や街並みを想像しながら散策するのは
決してムダなことではないはずだ。
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AM 6時40分。
Nの登場に先述の第一声。
「こんな朝早く待ち合わせてどないするねん!!」
そして、
「なんでそんなに遅いねん!?」
も付け加えた。
それに対するNの返答は
「朝が早いから。」
そっちが決めておきながら、そっちが俺を待たせる。
完全にNの術中にはまっている。
3つの旅の狙い。どうやらお先真っ暗である。
ワーワーと騒ぐこちらを鼻であしらうN。
どうやら合点のいかない1日が今、始まろうとしている。
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