takam16の本の棚
です。バーチャルですが......


 直木賞の選考過程を改めて確認しておこう。

①関係者350人によるアンケート調査
↓
②文藝春秋社の社員数十名が下読み&議論し、評価し、候補作決定
↓
③海千山千の選考委員による2時間の議論・話し合いで受賞作決定



takam16の直木賞候補作予想

作品名 作家名 出版社 選出回数
魔王 伊坂幸太郎 講談社 2回ぶり4度目
死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋 2回ぶり4度目
蒲公英草紙―常野物語 恩田陸 集英社 2回連続2度目
ネクロポリス 恩田陸 朝日新聞社 2回連続2度目
ハルカ・エイティ 姫野カオルコ 文藝春秋 4回ぶり3度目
はなうた日和 山本幸久 集英社 初選出
凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋 初選出
× こんちき あくじゃれ瓢六 諸田玲子 文藝春秋 8回ぶり2度目
おまけのこ 畠中恵 新潮社 初選出
沼地のある森を抜けて 梨木香歩 新潮社 初選出
× でいごの花の下に 池永陽 集英社 初選出
一枚摺屋 城野隆 文藝春秋 初選出
遠くて浅い海 ヒキタクニオ 文藝春秋 初選出
暗礁 黒川博行 幻冬舎 8回ぶり5度目
× 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 3回ぶり6度目
楽園の眠り 馳星周 徳間書店 4回ぶり5度目
女王様と私 歌野晶午 角川書店 初選出
× ニート 絲山秋子 角川書店 2回連続2度目
さよならバースディ 荻原浩 集英社 初選出
ポセイドンの涙 安東能明 幻冬舎 初選出
印の目安 ◎  ... 候補作濃厚 ▲  ... 可能性あり △  ... 一考の余地あり ×  ... 相対的に可能性低い 無印 ... 気になる程度 注  ... 同一作者のもう一方の作品に選出の可能性があり 「さらに、文藝春秋がいかに他社に冷たいかを表す資料を   次回用意したい。このデータはまさに驚愕である。」 で前回の記事を終えた。ご都合主義もいいところで、連載モノには お決まりの「先延ばし作戦」だ。1とか2とかいうものは決まって 記事のネタを意図的に増やす狙いがちゃっかりと含まれている。 それは書くネタが困った場合かもしれない。あるいは長すぎるから次回 につづくのかもしれない。読む者を繋ぎ止める手口かもしれない。 TV番組などでこのようなパターンに遭遇した時は、おおいに思案してもらいたい。 え?当ブログはどれだって? それは○○○○○である。 (乾いた笑い) さて、肝心要の他社に冷たいかを表す資料だ。 文藝春秋社以外で受賞した作家の初選出の出版社はどこか!?である。 130回 京極夏彦  角川書店    ← 中央公論新社 130回 江國香織  新潮社     ← 集英社 129回 石田衣良  新潮社     ← 集英社 126回 唯川恵   マガジンハウス ← ☆ 124回 重松清   新潮社     ← 講談社 123回 船戸与一  集英社     ← ☆ 123回 金城一紀  講談社     ← ☆ 121回 佐藤賢一  集英社     ← ☆ 121回 桐野夏生  講談社     ← 講談社 120回 宮部みゆき 朝日新聞社   ← 出版芸術社 117回 篠田節子  集英社     ← 毎日新聞社 117回 浅田次郎  集英社     ← 講談社 116回 坂東眞砂子 新潮社     ← マガジンハウス 115回 乃南アサ  新潮社     ← ☆ 114回 小池真理子 早川書房    ← ☆ 114回 藤原伊織  講談社     ← ☆ 110回 佐藤雅美  講談社     ← ☆ 110回 大沢在昌  読売新聞社   ← ☆ 109回 高村薫   早川書房    ← ☆ 108回 出久根達郎 講談社     ← 講談社 105回 宮城谷昌光 海越出版社   ← 海越出版社 105回 芦原すなお 河出書房新社  ← ☆ 103回 泡坂妻夫  新潮社     ← 幻影城 102回 原尞    早川書房    ← ☆ 101回 ねじめ正一 新潮社     ← ☆ 100回 杉本章子  新人物往来社  ← 新人物往来社  99回 景山民夫  角川書店    ← 新潮社  98回 阿部牧郎  講談社     ← 文藝春秋  97回 山田詠美  角川書店    ← ☆  96回 常盤新平  講談社     ← ☆  95回 皆川博子  新潮社     ← 講談社  94回 森田誠吾  新潮社     ← 新潮社 (過去20年分)   右が初選出された作品の出版社、左が受賞時の出版社。 文藝春秋社以外から初選出した作品に該当する作家が 文藝春秋社から直木賞作家になることは過去20年間ではたったの 1度しかないのである。 つまり、初めて直木賞候補作になった作家が文藝春秋社以外で選ばれた 場合は、文藝春秋社は原則、知らんぷりということだ。 これは裏を返せば、予想・推理する側にとっては非常に絞り込みやすい データであり、個人的には大変ありがたい限りである。 このデータを基に例えば、伊坂幸太郎氏の受賞についてデータにあてはめると、 伊坂幸太郎の選出歴 129回 新潮社 「重力ピエロ」 131回 講談社 「チルドレン」 132回 角川書店「グラスホッパー」 134回 ???  「死神の精度」or 「魔王」 「死神の精度」は文藝春秋、一方の「魔王」は講談社。 初選出は新潮社。 もし「死神の精度」で選出されると、文藝春秋ゆえの不利を被る。 「魔王」で選出された方が可能性は高くなるかもしれないが、そうなると 次に考えねばならないのは、新潮社から初選出された作家がいずれ直木賞作家 になる確率がどの程度あるのかに興味がわく。 なぜ、新潮社の初選出に興味深々であるかというのは、伊坂氏の問題という よりは、新潮社という出版社の問題である。 実はこの新潮社、文藝春秋社主催の直木賞への対抗というと語弊がありそうだが、 同じ位置づけの受賞を催している。 「山本周五郎賞」。 この賞と直木賞との関連データは後日示すが、新潮社は少なからず文藝春秋 と文学の点において両雄並び立たずの関係である。業界ネタを言わしてもらえれば、 書店向けの書籍ネット販売においては実のところ両社は共有している。 しかし、週刊文春と週刊新潮、文春文庫と新潮文庫といろいろ比較されやすい 関係だ。この山本周五郎氏(故人)に関しても、実はかつて直木賞受賞作家になった ものの、それを辞退した経緯がある。 決して仲が悪い同士ではないのだが、だからといって、おてて繋いでランランラン というわけにもいかないのだ。 では、直木賞初選出が新潮社であった場合、将来直木賞作家になれる確率を示す。 過去20年間、新潮社初選出該当数は全部で17。 うち初選出で直木賞になったのは、 乃南アサ氏、ねじめ正一氏 の2人。 また景山民夫氏は初選出ののちに角川書店で直木賞を受賞。 するとあとの14はその後選ばれもしないか、選ばれても候補作の域を出ない ということになる。 初選出が新潮社の場合、直木賞作家になれない確率 82、3% (該当は17つ) 他の出版社も確認しておく。すべて過去20年間である。 初選出が角川書店の場合  同じく 85.7 % (該当は7つ) 初選出が幻冬舎の場合   同じく 100 %  (該当は3つのみ) 初選出が集英社の場合   同じく 58.3%  (該当は12) 初選出が講談社の場合   同じく 33.3% (該当は18) ちなみに 初選出が文藝春秋の場合  同じく 43.8% (該当は32)  伊坂幸太郎氏が直木賞作家になるにはベルリンの壁なみの厚い壁があるのだ。 こうなってくると、他の作家に色気が出てしまう。 姫野カオルコ氏に◎というのはちょっと思い切った印なのだが、 彼女の選出歴を見ると 117回 文藝春秋 「受難」 130回 角川書店 「ツ、イ、ラ、ク」 134回 ??? 文藝春秋社主催の直木賞が候補作として文藝春秋から出す場合、 それは2度までというデータがある。つまり、姫野氏の今作品は 2年半ぶりの作品。しかもそれは文藝春秋から出版された。 あまり本作品が話題になっていないのは宣伝効果の問題もあるかもしれないが、 データから考えると、タイミングは今回にある。ただし、「ハルカ・エイティ」 で選出され、受賞できなかった場合、文藝春秋はもう面倒を見ないだろう。 その意味では危険な◎である。個人的には今回は候補作を見送ってほしいとの 願いも実はある。 諸田玲子氏も選出されれば文藝春秋より2度目となる。 つまり受賞できるかできないかの瀬戸際である。 一方、東野圭吾氏、馳星周氏、黒川博行氏はみな、文藝春秋より2度選ばれながら、 受賞を逃している作家達だ。予想には入れておいたし、実績もあり選ばれる余地は あるが受賞にこぎつけるかどうかといえば、正直疑わしい。 そして新潮社から初選出を予想している畠中恵氏と梨木香歩氏。 今が旬のお二人だが、選出される条件がよくない。新潮社からの選出がよくない。 新潮社は、あくまでも何度も他の出版社から選出された結果として受賞がかなう 可能性が高いということを念頭に入れておかねばならないだろう。 話は伊坂幸太郎氏の選出歴に戻る。 よく見ると、131回と132回に連続入選している。 次回、この連続入選がどれほどのパワーを占めるのか、そして 連続入選は受賞に直結するのかを検証する。 なぜなら、11月末の締め切り直前に有望な若手作家の駆け込み出版 があったからだ。  三崎亜記氏、古川日出男氏である。 前回も2人は入選している。どうやら調査が必要だ。