takam16の本の棚
です。バーチャルですが......

直木賞話の前に、takam16はフットボール関連の話は正直強い。
よって先日のワールドカップ組み合わせ抽選について
少し述べ、それから本題に入る。

12月10日早朝、ワールドカップ組み合わせ抽選が行われた。
日本代表はシード国がブラジルであるF組に入った。


ブラジル、クロアチア、オーストラリア、日本


イングランド代表監督のズベン・ゴラン・エリクソンは抽選日前日のBBCラジオの
インタビューにおいて、最も避けたい相手として、オランダ、そしてオーストラリア
を挙げた。結果、エリクソン氏の避けるべき2カ国は一方はグループ中最も厳しいと
言われているアルゼンチンがシード国のC組、そしてブラジルがシード国であり、同時に
日本代表のいるF組に入った。

オーストラリアを率いるフース・ヒディング代表監督は現在世界最高峰の指導者の1人である。
そしてオーストラリア代表のメンバーのほとんどはイングランドのプレミアリーグに所属
する選手、よって強化試合はヨーロッパを中心に行っているし、今後もその方針だ。
つまりはヨーロッパのチームと同等に扱う必要がある。

クロアチアは98年のワールドカップで3位という好成績をあげたものの、90年代初期の
戦争のため、その時に子供だった選手に満足な若手育成ができなかった影響から、
しばらく低迷期が続いたが、ようやくその苦境を脱し、8年前のスター選手に頼るスタイル
から、チームとして戦うスタイルに変容した。その意味では前回のイメージを一度リセット
した方がよい。
また、オーストラリアにはクロアチア移民が多く、オーストラリアの選手の中にも
クロアチア移民選手が多くいる。両国はその意味では良好な関係である。
チーム成績の特徴として言えることは、強い者に対等に戦える力がある反面、
弱い者にも対等に戦ってしまうところがある。


そのため、初戦にブラジルがクロアチアに勝つという前提、そして日本が
オーストラリアに勝つという前提の上での報道にはもっと懐疑的であってよい。
さもなくば、日本は98年の二の舞だ。


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直木賞の選考過程

①関係者350人によるアンケート調査
↓
②文藝春秋社の社員数十名が下読み&議論し、評価し、候補作決定
↓
③海千山千の選考委員による2時間の議論・話し合いで受賞作決定



「連続入選」。
高校野球やワールドカップ等でいうなら「3年連続」「2大会連続」
ということであり、トーナメントやリーグ戦といった厳しい戦いを続けて勝ち抜いてきた
のだ。実力があることに相違はない。

ここでいう「連続入選」とは、直木賞の連続入選である。
直木賞は年2回行われる文学賞である。

前期直木賞は1月発表、対象期間は前年6月~11月発行の出版物。
後期直木賞は7月発表、対象期間は前年12月~本年5月発行の出版物。

以前は文芸誌等から選出されることも多々あり、その場合は対象期間が少し変わるのだが、
近年は出版物からの選出ばかりである。
連続入選を果たすということは、年間に最低2作品を期間に照らし合わせて発表し、
かつ主催者の文藝春秋社(正式には財団法人日本文学振興会)の選考会でお気に目さなければ
ならない。
年間非常に多くの文学作品が発表されるわけで、その中で連続して候補作に選ばれることは
やはり無視できないことである。

しかしながら、いくら連続入選したからといって、直木賞を受賞しないことには、
そのうち候補作にノミネートされたことすら忘れられる。
人の記憶力などしれたものだ。
よって今回は連続入選することが、直木賞受賞に結びつくのかを研究する。



過去の連続入選者とその作家が直木賞を受賞したかどうかを以下に列挙した。

伊坂幸太郎 → ×
石田衣良  → ○
奥田英朗  → △
松井今朝子 → ×
乙川優三郎 → ○
田口ランディ→ × 
重松清   → ○
真保裕一  → ×
篠田節子  → △
黒川博行  → ×
宮部みゆき → △ (連続が2度ある)
池宮彰一郎 → ×
坂東眞砂子 → △
中村彰彦  → ○
内海隆一郎 → ×
高橋義夫  → ○
宮城谷昌光 → ○
清水義範  → ×
古川薫   → △
笹倉明   → ○
堀和久   → ×
藤堂志津子 → ○ 
西木正明  → ○
三浦浩   → ×
逢坂剛   → ○
山崎光夫  → ×

(94回~133回までの20年間に限定) 
注)宮部みゆきは2度の「連続入選」を経験しているがここでは1と数える
注)篠田節子、堀和久、山崎光夫は実際は3連続であるが、ここでは最初の連続
 だけを示している。3連続についてはあとで示す



連続入選の該当数26個。
○はその連続入選により受賞したことを意味し、
△は連続入選したがその時は受賞できず、のちに受賞したということ、
×は連続入選したがその時は受賞できず、のちの受賞もないということ
である。

○は10個あり、その確率は 40%
△は 5個あり、その確率は 19%
×は11個あり、その確率は 44%

最終的に直木賞を受賞と定義しても、確率は 57、7%
あまり際立った数字は見当たらない。

そこで連続入選に該当する作品の出版社からデータを出してみた。
ここでは連続入選の結果受賞する場合と、連続入選では受賞を外すものちに選ばれた
場合をあわせる。つまりは最終的に直木賞を受賞する確率である。

連続入選のパターンが

文藝春秋 → 文藝春秋 の場合、受賞率は  100% (該当3個中)
他出版社 → 文藝春秋 の場合、受賞率は 77、8% (該当9個中)
文藝春秋 → 他出版社 の場合、受賞率は 71、4% (該当7個中)
他出版社 → 他出版社 の場合、受賞率は 30、8% (該当13個中)
他出版社が同じ出版社の場合、  受賞率は   25% (該当4個中)

相変わらず、文藝春秋には明らかに有利に働く結果が出ている。
文藝春秋社での入選が連続入選のいずれかに入れば、7割以上の確率で
直木賞作家になることができる。

次に、この連続入選という機会が、入選の何回目に訪れているかを調べた。
例えば、石田衣良氏の場合は

初入選     126回  集英社  「娼年」
2回ぶり2度目 128回  文藝春秋 「骨音」
2回連続3度目 129回  新潮社  「4TEEN」 直木賞受賞

という具合にである。

初入選を①、2度目の入選を② というように以下に列挙する。

伊坂幸太郎 →× ②③  
石田衣良  →○ ②③ 
奥田英朗  →△ ②③
松井今朝子 →× ①②
乙川優三郎 →○ ③④
田口ランディ→× ①② 
重松清   →○ ②③
真保裕一  →× ①②
篠田節子  →△ ②③
黒川博行  →× ①②
宮部みゆき →△ ①② と ④⑤  
池宮彰一郎 →× ①②
坂東眞砂子 →△ ①②
中村彰彦  →○ ②③
内海隆一郎 →× ①②
高橋義夫  →○ ④⑤
宮城谷昌光 →○ ①②
清水義範  →× ①②
古川薫   →△ ⑧⑨
笹倉明   →○ ①②
堀和久   →× ①②
藤堂志津子 →○ ①②  
西木正明  →○ ③④
三浦浩   →× ③④
逢坂剛   →○ ①②
山崎光夫  →× ①②


①② では 40%
②③ では 83%
③④ では 50%

の確率で受賞できることがわかる。
①②の数字がイマイチなのは、時期尚早ということか。
②③、または③④と回を重ねたほうが受賞はしやすいというわけか。



ちなみに3連続、4連続で入選を果たした作家とその結果も紹介しておく。

篠田節子   ②文藝春秋   → ③双葉社  → ④集英社で受賞
堀和久    ①講談社    → ②文藝春秋 → ③講談社も落選
山崎光夫   ①講談社    → ②講談社  → ③文藝春秋も落選
林真理子   ①角川書店   → ②角川書店 → ③新潮社    → ④文藝春秋で受賞
高橋治    ①文藝春秋   → ②新潮社  → ③講談社で受賞
村松友視   ①角川書店   → ②角川書店 → ③角川書店で受賞
胡桃沢耕史  ②サンケイ新聞 → ③徳間書店 → ④文藝春秋で受賞
連城三紀彦  ②講談社    → ③新潮社  → ④新潮社 → ⑤新潮社で受賞
中山千夏   ①文藝春秋   → ②文藝春秋 → ③文藝春秋も落選

上の3人は「連続入選」でも登場しており、そのデータはこの「3連続入選」
のデータの一部であることを補足しておく。また2人以外については
過去20年間より前の話であり、3連続や4連続は今となってはほぼ出ない
ため、このデータは現在ではあまり参考にはならない。

では、以上の「連続入選」をふまえて、その可能性のある作家を列挙する。

まずは前回ノミネートされた作家の中からは

絲山秋子   角川書店  「ニート」        2回連続2度目
恩田陸    集英社   「蒲公英草紙―常野物語」 2回連続2度目
       朝日新聞社 「ネクロポリス」     
三崎亜記   集英社   「バスジャック」     2回連続2度目
古川日出男  集英社   「ロックンロール七部作」 2回連続2度目

また、過去の連続入選経験者からは

伊坂幸太郎  文藝春秋  「死神の精度」      2回ぶり4度目
       講談社   「魔王」     
黒川博行   幻冬舎   「暗礁」         8回ぶり5度目


この中で、受賞に近そうな作家を考えてみる。
まずは古川日出男氏である。
彼の初入選作は「ベルガ、吠えないのか?」。文藝春秋社である。
連続入選に文藝春秋が入れば、受賞率は7割を超える。

しかしながら、少し思い出してもらいたい。文芸春秋社で初入選をした場合は、
他の出版社で受賞する可能性は非常に少なく、しかも集英社ではゼロなのだ。
よって、古川氏は入選の可能性は十分あるものの、受賞となると少し手が出せない。
古川 日出男
ロックンロール七部作
次に、三崎亜記氏「バスジャック」は集英社。前回も集英社より「となり町戦争」であった。 実は初入選が集英社である場合、のちの直木賞受賞率は41.6%である。 そのため、「バスジャック」が出版第2作目という彼女の経験値の低さがネック である。ただし、その壁を乗り越えて候補作に選ばれるのであればマークは必要だ。
三崎 亜記
バスジャック
恩田陸氏は現在、上昇気流に乗りそうな作家の1人だ。 もし候補に選ばれた場合の対象作は「ネクロポリス」(朝日新聞社)と 「蒲公英草紙―常野物語」(集英社)なのだが、朝日新聞社での入選は今回は期待薄だと 思っている。直木賞候補作には出版社の壁も乗り越える必要があり、当社での選出の 壁は高いといわざるを得ない。よって「蒲公英草紙―常野物語」(集英社)に可能性 があるのだが、これだと集英社より古川氏、三崎氏、恩田氏と3人も選ばれることになり、 このような例は過去にない。よって、受賞以前に候補作になれるかどうかがまずは問題である。 絲山秋子氏。 「逃亡くそたわけ」(中央公論新社)の前回、そして「ニート」(角川書店)の今回。 連続入選のチャンスはもちろんある。彼女は実績を持っている。川端康成文学賞や、 芸術選奨文部科学大臣新人賞、文学界新人賞といった底力を持った賞を獲っている。 また、中央公論新社からの初選出では京極夏彦氏がいる。そして彼は角川書店より 直木賞作家となった。ただし連続入選ではなかったし、 連続入選に文藝春秋社が含まれていないのはマイナス材料である。 それは三崎亜紀氏も同じであるが、現状ではグレーゾーンだろう。候補作となった 時に他との比較となろう。
絲山 秋子
ニート
連続入選経験者は2人。 まずは黒川博行氏。 しかし残念ながら、文藝春秋社より2度候補作に選ばれながら落ちるという屈辱を 味わっており、この場合はのちの受賞は非常に困難だ。消しであろう。 そして、伊坂幸太郎氏。 彼が直木賞候補の視点から見ると今回のNO1である。 2度目、3度目の連続入選経験者は、83%の確率で直木賞作家になる。 あとは今回受賞するか、次回以降に受賞するかの問題だ。 ただこの連続入選には残念ながら文藝春秋社はからんでいない。また、 彼の初入選は新潮社だった。この新潮社からの初入選者に文藝春秋社は他社以上に厳しい。 20年間で3人いるが、うち2人は初入選でいきなりの受賞。あと1人も角川書店 での受賞だ。 この厳しさの原因に直木賞のライバルかと思われる新潮社主催の山本周五郎賞の 存在があることを前回述べている。 次回、この山本周五郎賞をからめた直木賞にまつわる話をさせていただくことにしよう。 結局は、以上に挙げた6人のダメダメデータばかり出してしまった。 深く追求しすぎると、へそ曲がりな物言いになってしまうことを少し実感した。 また、中間報告でお知らせした直木賞候補作品に若干の変更がある。 それも次回語りたい。